名刺のデザインが悪かったせいで失注した人はいません。
失注するのは交換の3日後で、しかもほぼ決まった3つの地点です。どれも人間関係の問題の顔をした段取りの問題で、だから営業研修ではまず直りません。
問題は交換の瞬間ではありません
紙の名刺を渡したときに、物理的に何が起きているかを考えてみます。
あなたは小さな紙を渡します。相手はその瞬間から、いくつかの作業を引き受けたことになります。今日一日なくさずに持っておく。その日会った11人の中からあなたを思い出す。スマートフォンに文字を打ち込む。そのうえで、連絡するかどうかを決める。
つまり、価値を渡す前に作業を渡しています。この流れのどの段階でも、温まっていた相手はただの名前に戻ります。そしてそのどれも、あなたの印象が良かったかどうかとは関係がありません。
ここが考え方の切り替えどころです。交換はうまくいっています。漏れているのは、そのあとの仕組みです。
ひとつめ、転記
誰かが名刺を連絡先データに変えなければなりません。作業としてはそれだけで、想像よりずっと壊れやすい工程です。
自分で入力する場合、騒がしい会場で、片手に飲み物を持ちながら、小さな紙のメールアドレスをスマートフォンのキーボードで打ちます。長いドメインは打ち間違えます。役職は飛ばされます。会社名は入っても携帯番号は入りません。
スキャンする場合、OCR はだいたい正しく読み取り、どこか1項目を静かに間違えます。まだ使っていない連絡先を校正する人はいません。
あとでやろうと思う場合、これが一番多いのですが、その「あとで」が名刺の墓場です。ポケットに入り、引き出しに移り、山になります。6週間後には、名前が書かれているだけで記憶のついていない紙です。
これを直すのは、きれいな字ではありません。連絡先データがすでに出来上がっていて、相手は保存を押すだけ、という形です。かざすとプロフィールが開き、保存すると、あなたが書いたとおりの表記で端末に入ります。
ふたつめ、タイミング
フォローアップが自然に感じられる期間は短いです。おおまかに言えば、相手の中であなたの顔と名前が結びついていられる間だけです。
多くの場合それは数日です。それを過ぎると、あなたのメールは「会ったと言っている知らない人」からの連絡になります。相手が礼儀正しくても、読まれ方はわずかに守りに入ります。
やっかいなのは、紙の運用がこの期間の外へ押し出す方向に働くことです。名刺はたいてい翌週の月曜にまとめて処理されます。その作業は退屈なので後ろにずれます。メールを出す頃には、あなたは「会った人」から「思い出さないといけない名前」に変わっています。
握手から最初の有効な連絡までの間隔を縮めるものは、文面を良くするどんな工夫よりも価値があります。ロマンのない話ですが、例外をあまり見ません。
みっつめ、情報の古さ
3つめは数か月後に現れ、ほとんど気づかれません。
役職が変わる。会社が移転する。携帯番号が変わる。日程調整のリンクが別のツールになる。あなたがこれまでに配った紙の名刺は、財布や引き出しの中で、そのとき一斉に間違いになります。そしてその事実が相手に伝わる経路はありません。
これまで作ってきた接点は、片方向にゆっくり漏れていきます。あなたに連絡できる人の数は時間とともに減り、しかもその減り方は見えません。
カードの向こう側にホストされたプロフィールがあると、直せる唯一の方法で直ります。正しい情報を1か所に置き、他は全部そこを指すようにする、という方法です。14か月前にかざしてリンクを保存した人が受け取るのは、出会った日の情報ではなく今の情報になります。
実際に変わること
ここは正直に書きます。この分野には、正直でない説明が多いからです。
デジタル名刺で相手に好かれることはありません。無かった興味が生まれることもありません。会話がうまくいかなかったなら、この記事に書いたことは何の役にも立ちません。
変えられるのは、本当に温まっている相手が勝手に冷めていく理由のほうです。打ち間違い、処理されなかった月曜のまとめ作業、変わってしまった番号。これは小さな話ではありません。すでに獲得した見込み客だけに起きる失敗だからです。
測る価値のある数字はひとつ
多くのチームは、交換のあとに何が起きているかを把握していません。名刺が会場を出た瞬間に、工程ごと会社の外に出てしまうからです。
数字をひとつだけ取るなら、これです。前回のイベントで名刺を渡した相手のうち、今日 CRM に入っているのは何人か。そして、1週間以内に実際に連絡したのは何人か。
次のイベントのあとにも同じ質問をしてください。縮めようとしているのはその差で、この領域で見栄えだけの数字にならないのは、たぶんそれだけです。