NFC名刺を分解しても、中に大したものは入っていません。カードの内側をコイル状の配線が一周していて、その先に小さなチップが付いているだけです。チップが持っているのはウェブアドレス一つ。誰かがかざしたときに見える写真や役職や「連絡先を保存」ボタンは、すべてウェブページの側にあります。
この作りを知っておくと、プライバシーは大丈夫か、なぜ充電が要らないのか、といったよくある疑問のほとんどに答えが出ます。
チップに電池はない
NFCカードはパッシブ型です。スマホが近づくと、読み取り機が13.56MHzの磁界を出し、カードのコイルがそこから電力を受け取ってチップを起こし、応答します。スマホが離れれば、カードはまた何もしない状態に戻ります。
距離が短いのはそのためです。十分な電力を受け取るには、カードがスマホのアンテナにほぼ触れている必要があります。厚いケースや金属のリングホルダーで読み取れなくなるのも同じ理由です。スマホから電力を受け取るまで何もしないので、財布に入れっぱなしでも消耗しません。
どれくらい保存できるか
ほんのわずかですが、それで足ります。NXPのNTAG 213、215、216がわかりやすい例です。これらはNFC Forum Type 2タグで、NXPが示すユーザー領域は144、504、888バイトです。短い段落ひとつ分の文章で、いちばん小さなチップは埋まります。
名刺はリンクを、URIレコードを含むNDEFメッセージとして保存します。AndroidもiPhoneも探しにいく形式です。このレコードは、アドレスのよくある書き出しを1バイトの番号に置き換えて容量を節約します。Androidのドキュメントでは、1バイトがリンク先頭のhttps://www.の代わりをしている例が示されています。ドメインと名前を組み合わせたプロフィールのアドレスなら数十バイトで、144バイトのチップにも楽に収まります。
だから大容量のチップをうたう売り手がいたら、何に使うのかを聞いてみてください。プロフィールを開くだけのカードなら、余ったメモリは空のままです。
連絡先ではなく、リンクを保存する理由
名前や電話番号を、連絡先データとしてチップに直接書き込むこともできます。その場合、内容が変わるたびにカードを書き直すことになり、読み取った人の手元には二度と更新できない写しが残ります。
リンクを保存すれば、連絡先はあなたが管理するページに移ります。役職や電話番号を変えれば、これまでに渡したすべてのカードが新しい内容を開きます。カードを落としても、拾った人が知るのは、プロフィールですでに公開していたことだけです。その場合についてはカードをなくしたらどうなるかで詳しく書きました。
どれだけ持つか、誰が変えられるか
NXPはNTAG 21xのチップについて、データ保持10年、書き込み10万回と定めています。読み取りは書き込みの回数に数えられないので、毎日かざされるカードでも何かを使い減らしているわけではありません。実際には、メモリよりもカードの素材やアンテナのほうが先に傷みます。
確かめておきたいのは書き換えです。何も設定されていないタグは、対応アプリがあればどのスマホからでも書き換えられます。NXPのチップはロックと32ビットのパスワード保護に対応していて、失敗回数の上限も設定できます。つまり、他人がリンク先を変えられないように設定できます。さらにオリジナリティ署名を持っていて、ソフトウェアがNXP純正のチップかどうかを確認できます。
相手のスマホがしていること
iPhoneは、ウェブアドレスなど対応するリンクを含むURIレコードを探します。バックグラウンド読み取りに対応した機種では、システムがリンクの通知を表示し、それをタップするとページが開きます。Appleは、バックグラウンド読み取りが止まる場面も挙げています。カメラやApple Pay Walletの使用中、機内モードのとき、アプリが独自にNFCを読み取っている最中、そして端末が一度もロック解除されていないときです。
Androidは、NFCが設定でオフになっていない限り、画面のロックが解除されているあいだタグを探しています。Googleのドキュメントによると、Android 16からはウェブリンクを持つタグを、ほかのリンクと同じように開きます。Android 17からは、まず「リンクを開く」通知が出て、相手がそれをタップして先に進みます。ひと手間増えますが、本人が選ばない限りページが開かないということでもあります。
どちらの場合も、何もインストールされず、相手から何かが送り返されることもありません。そもそもどのスマホで読めるのかが気になる人は、タップ式の名刺は、どのスマホでも使えるのかを読んでみてください。